食道裂孔ヘルニア

Hiatal Hernia

食道裂孔ヘルニアとは

食道裂孔ヘルニアは、横隔膜にある食道裂孔という隙間から、胃の一部が胸腔内に押し出される状態を指します。加齢や肥満、妊娠などによる腹圧の上昇、筋力低下が主な原因で、逆流性食道炎の発症リスクを高める要因ともなります。ヘルニアのタイプには、最も一般的な「滑脱型(スライディング型)」のほか、「傍食道型」や「混合型」があり、それぞれ症状や治療方針が異なります。

食道裂孔ヘルニアタイプの割合

  • Type I(滑脱型)95
  • Type II〜IV(傍食道型およびその他)5

食道裂孔ヘルニアは、横隔膜の食道裂孔から胃の一部が胸腔内に押し出される状態で、そのうち滑脱型(Type I)が95%以上を占める最も一般的なタイプです。その他の傍食道型(Type II~IV)は約5%と少数ですが、重症例に多く、注意が必要です。

年代別 食道裂孔ヘルニアの発症傾向

  • 30代以下
    14
  • 40代
    17
  • 50代
    23
  • 60代
    28
  • 70代
    31
  • 80代以上
    42

食道裂孔ヘルニアは加齢とともに有病率が高くなる傾向があり、高齢になるほど発症しやすくなります。特に中高年の女性に多くみられる傾向がありますが、男女ともに発症しうる疾患です。症状がない場合でも進行していることがありますので、気になる症状があれば早めの受診をおすすめします。

食道裂孔ヘルニアの主な症状

食道裂孔ヘルニアは無症状のこともありますが、多くの場合は以下のような症状が現れます。特に食後や横になると悪化する傾向があります。

  • 胸やけや呑酸(酸っぱい液体がこみ上げる感じ)
  • みぞおちの痛みや違和感
  • 食後に症状が悪化する
  • 咳や喘鳴、のどの違和感
  • 横になると症状が強くなる
  • 胃もたれや早期満腹感

食道裂孔ヘルニアの原因と発症メカニズム

食道裂孔ヘルニアの発症には、以下のような要因が関与しています。主に腹圧の上昇や横隔膜周囲の筋力低下がきっかけとなります。これらの要因が重なることで、食道と胃の接合部(噴門)が横隔膜を越えて上方へずれ込み、ヘルニアが形成されます。

  • 横隔膜や食道周囲の筋力低下(加齢による)
  • 慢性的な咳や便秘による腹圧の上昇
  • 肥満や妊娠などによる内臓の圧迫
  • 過去の腹部手術や外傷
  • 遺伝的素因や先天的な構造異常

食道裂孔ヘルニアの検査・診断

食道裂孔ヘルニアの診断には、内視鏡検査(胃カメラ)が診断において欠かせない検査です。当院では内視鏡専門医が、上部消化管内視鏡を用いて食道と胃の接合部の状態を直接観察し、ヘルニアの有無や逆流の有無を評価します。検査は経鼻内視鏡や鎮静剤を使用することで、できる限り負担を軽減しております。

上部内視鏡検査(胃カメラ)

食道裂孔の位置関係や粘膜の変化、逆流性病変の有無を直接観察することができます。

問診および症状評価

胸やけ・呑酸・咳などの症状を詳しくお伺いし、日常生活との関係や頻度を踏まえて診断の参考にします。

食道裂孔ヘルニアの治療

治療は症状の重症度やヘルニアのタイプに応じて選択されます。多くの場合、まずは生活習慣の見直しや薬物療法が行われ、必要に応じて手術が検討されます。内視鏡検査や症状の経過観察により、治療方針を定期的に見直すことが重要です。

  • 食後すぐに横にならない、腹圧を避ける姿勢をとるなどの日常的な工夫
  • 胃酸分泌を抑える薬(PPIやH2ブロッカー)による内科的治療
  • 体重管理や禁煙・禁酒など生活習慣の改善
  • 重度や合併症がある場合には外科的治療(腹腔鏡下ヘルニア修復術など)

食道裂孔ヘルニアの予防

発症や再発を予防するためには、日常生活における意識的な習慣が大切です。

  • 適正体重の維持
  • 腹圧のかかる動作(重い物を持つ・いきむなど)を避ける
  • 食後2~3時間は横にならない
  • 便秘を防ぐために食物繊維や水分をしっかり摂る
  • 過度な飲酒・喫煙を控える
  • 寝具の工夫(頭側を少し高くする)も効果的

食道裂孔ヘルニアに関するよくあるご質問

食道裂孔ヘルニアは自然に治ることはありますか?

食道裂孔ヘルニアが自然に完治することはほとんどありません。症状を和らげるためには、生活習慣の改善や薬物療法が基本となります。放置すると逆流性食道炎や胸やけの悪化につながるため、医師の診断を受けて適切な治療を継続することが大切です。

食道裂孔ヘルニアの治療で手術が必要になるのはどんなときですか?

多くの場合は薬による治療で症状をコントロールできますが、重度の食道裂孔ヘルニアや薬の効果が不十分な場合には手術が検討されます。特に、強い胸やけ、吐き気、逆流性食道炎の合併症が見られるケースでは、外科的治療が有効な選択肢となることがあります。

食道裂孔ヘルニアと逆流性食道炎の違いは何ですか?

食道裂孔ヘルニアとは胃の一部が横隔膜を通って胸の方へ押し出される状態を指します。一方、逆流性食道炎は胃酸が食道へ逆流することで炎症を起こす病気です。食道裂孔ヘルニアは逆流性食道炎を引き起こす主な原因の一つであり、両方の症状が同時に見られることも少なくありません。

食道裂孔ヘルニアの症状にはどんなものがありますか?

代表的な症状は胸やけや胃酸の逆流ですが、胸の痛み、のどの違和感、咳、食べ物がつかえる感じなども現れることがあります。症状の程度には個人差があり、無症状のまま健診で偶然見つかるケースもあります。

食道裂孔ヘルニアは生活習慣で改善できますか?

生活習慣の改善は症状緩和に役立ちます。具体的には、就寝前の飲食を避ける、脂っこい食事やアルコールを控える、肥満を予防する、姿勢に気を付けるなどが効果的です。軽度の場合はこれらの工夫だけで症状が落ち着くこともあります。